恋愛テクニックとしての心理学について

「こういった現象を〇〇効果と言います」と聞くと、人の行動には決まったパターンがあるように思えてきます。心理学が「行動の科学」と呼ばれる所以は、人の行動を統計的に分析するところにありますが、その研究を恋愛に活かしてみようというのが当ページです。

と言っても、「こうすれば恋が成就する」と保証するものではありません。いろんな「〇〇効果」を結びつけ、恋愛戦略を練って楽しむ感じの内容ですので、学術目的で調べている人が参考にするようなものではありません。単なる暇つぶし用の記事です。

また、いろんな「〇〇効果」を出していますが、有名だからといって心理学的に認められているとは限りません。この手の話でよく出てくる「吊り橋効果(ダットンとアロンの吊り橋実験)」は否定的な実験結果もあり、その再現性を疑問視する声もあります。科学は再現性があって初めて理論として成り立つもの。どうか、その点だけは頭の片隅にでも入れておいてください。

出会いの恋愛テクニック

【初頭効果】
最初に与えられた情報が、後の情報にも影響を及ぼす現象。

【親近効果】
一番最後の情報が印象に残りやすい現象。

【ゲイン効果&ロス効果】
ゲイン効果は、他人に与えている印象をポジティブに裏切ることで好印象に繋げること。いわゆるギャップ萌え。ロス効果は、ゲイン効果の逆です。

【スリーセット理論】
初対面から3回目までで、その人の印象をかなり固定化してしまうこと。

言い換えれば、「最初が肝心」と「終わりよければすべてよし」でしょうか。「出会いは最悪」から始まる恋愛ストーリーは、親の顔より見たかもしれませんが、あの展開がテンプレートとして存在するのは、「最初から印象が良いより、ドラマチックになる」だけではないでしょう。

怖そうな人が実は優しかったら、優しそうな人が優しいよりも、優しいの印象度が違います。同じレベルの親切であっても、怖そうな人にしてもらったそれと、優しそうな人のそれでは違うという話。逆に、怖そうな人が怖かったら「やっぱり」で済みますが、優しそうな人が怖かったら「裏表がある」と思ってしまいます。

優しそうだと判断したのは自分で、相手は「自分は優しい」なんて言ってないのに、勝手に「裏表がある」と思ってしまう。その辺が人間の印象の難しいところ。だからといって、出会いの場で悪い人を演じても、それはそれで後に続かない可能性もあります。「性格が悪そう」と敬遠されたら、関係性が続きませんので。

そこで、相手が好みそうなギャップを演出するのです。同じ印象で攻め続けるのではなく、どこで意外性を見せて相手を落とすのかを計算に入れ、その転換点を効果的にするための第一印象を演出する。転換点は遅すぎてもダメ。まぁ、いつかは本性を見せないといけないでしょうから、最初から素で付き合っていた方が楽かもしれませんけども。

「似ている」を「好き」に変えるテクニック

【マッチング仮説】
相手と釣り合いが取れるかを考え、似ている人を選ぶ傾向のこと。

【類似性の法則】
似ている人に親近感を持つこと。使用例:セールスマン「実は自分も〇〇の出身なんですよ」

【ミラーリング】
自分と同じ趣味や趣向を持つ人に惹かれる「類似性の要因」を利用したテクニック。好意を持っている人と向き合った際、相手が足を組んだら自分も同じように足を組んでしまうことがあります。それを意識的にすることで、好意を持ってもらう方法。やっていることは鏡写し。

なんの共通点もない人より、少しでもある方が好感を抱きやすいもの。特に会話では、同じ話題で盛り上がれるかどうかは、関係性の継続にも影響してきます。ということで、相手の趣味・嗜好といった情報を仕入れ、それに合わせると効果的なのは言うまでもありません。

さらに、相手の身体的な動きを真似ることで、無意識レベルで好感度を上げられるかもしれません。ただ、やりすぎると気持ち悪いと思われることでしょう。

周りから攻める恋愛テクニック

【コントラスト効果】
最初に提示されたものと次のものが違うと、実際よりも その差を大きく感じること。

【ハロー効果】
ある対象を評価をする時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる現象。「Aな人はBだ」といった具合に、Aという側面だけで、Bの評価も決まってしまうこと。

【モスコビッチの方略】
少数派が一貫して強い主張を持ち続けることで、多数派に「自分たちの主張が間違っているのかも」と思わせること。

【ホランダーの方略】
少数派の中にいる有力者の発言によって、多数派の意見を切り崩していく方法。「あの人が言うのなら間違いない」みたいな話。

【バランス理論】
対人関係において三者以上の存在があるときに、その三者間の認知関係のバランスを保とうとする心理状態。「Aが嫌い。だから、Aの好きなものは嫌い。Aが嫌いなものは好き」というバランス。

【心理的リアクタンス】
自分の行動や選択は、自分の意思で決めたいという欲求。「勉強しなさい」と言われると、するつもりだったのに「嫌だ」と言ってしまうようなこと。

弁当屋さんのメニューには、誰も買わないような高い弁当があったりします。実際、あまり売れていません。でも、売れないからといって、売り上げに貢献していないとは言えないのです。それは人の心理に働きかける要素があるから。

高い弁当があることで、他の弁当が安く見えます。松竹梅というランク分けがされていると、人は竹を選びやすくなる傾向があるそうです。それと同じこと。松が高いという感覚を引き上げてくれることで、竹が安くてお買い得に思えてきます。これが竹と梅の二択だったら、高いと安いの比較になってしまい、梅に流れていしまうことでしょう。

梅の後に見た竹は高いけど、松の後にみた竹は安い。好みのタイプの後に見た凡人は冴えないけど、生理的に無理な人の後に見た凡人は真っ当に思える。なので、自分の周りに相手の好みじゃないタイプを集めることで、自分を引き立たせることができるかも。

逆に、相手の周りは「自分を高評価している人」で かためるのがベター。仮に、高評価している人が少数派であっても、ずっと支持してくれる人がいれば、周りの意見も変わっていくことでしょう。特に、カリスマ性のある人に支持されれば、少数派が多数派になることもあるでしょう。

意中の相手だって、周りの評価が高い人物は気になるし、放っておけなくなるはず。好きな友達が好きな人は、自分も好き。だから、「みんなの憧れ」が生まれる。これが外堀を埋める理由です。

ただし、嫌いな人が好きな人は嫌いになるので、支持してくれる人は選んだ方がいいかも。まぁ、誰を好きになるかは各人の自由ですけどね。あと、「付き合っちゃえよ」みたいに、はやし立てる人は要注意。からかわれると人は思わず「嫌だよ」と言ってしまいがち。口に出した言葉は戻せません。「NO」と言ってしまったことで、心理的なブレーキがかかってしまうことも……。

騙しの恋愛テクニック

【錯誤帰属(根本的な帰属の誤り、対応バイアス)】
ある人物がある行為をしたとき、その状況に関わらず、その行為をするような内的要因が、その人物にあったと考えてしまうこと。例えば、ドキドキするような場所にいるのに、そのドキドキは「一緒にいた人のせいだ」と思ってしまうこと。

【ローボール・テクニック】
好条件を出して承諾を得てから、不利な条件を付け加える方法。

【ドア・イン・ザ・フェイス】
断られることが前提の大きな要求をした後、受け入れてほしい小さな要求をすると通りやすいこと。

【フット・イン・ザ・ドア】
要求レベルを徐々に上げていく方法。

リゾート地で会った異性が素敵に見えるのがゲレンデマジック。なので、街で再会すると「あれ?」と思ってしまうことも……。そこには、リゾート地で楽しもうというワクワク感が、相手の評価に繋がってしまっている「誤解」があるのです。楽しい場所だからワクワクしているのに、相手が素敵だからワクワクしているという勘違い。

とはいえ、互いの距離を縮めたいのなら、お互いに盛り上がれる場所に行くのも効果的。好きなアーティストのコンサート、テーマパーク、美味しいレストラン等々。気持ちが高ぶるスポットは、その場の魅力を自分の魅力に換えてくれるかも。

そういった場所に行きづらい関係性なら、誘い方を変えてみるのも手でしょう。「Aのライブに一緒に行かない?」から始めると「行かない」になる確率大。いきなり聞いたら、行くか行かないかの二択。距離が縮まっていない段階では、なかなか「行く」という返答はしづらいもの。

しかし、「Aが好きだったよね?」「うん」「どの辺が好きなの?」「ああでこうで、だから好き」「ライブって、一人で行く派?」「一人では行かないかも」「前に行ったのいつ?」「かなり前。なかなかチケット取れなくて」「そうなんだ。チケット持ってるんだけど、Aのライブに一緒に行かない?」とくれば、もう断りづらい。

同じ「Aのライブに一緒に行かない?」でも、そこに至る過程で「Aが好き」「好きな理由も言える」「ライブには一人で行かない」「チケット取れないから行かない」という言質を取っています。

「好きな人のライブだから行くよね?」「一人じゃ行かないのなら、一緒に行く人が必要だよね?」「チケット取れなくて行かなかったのなら、チケットがあれば行くよね?」という意味を含んだ「Aのライブに一緒に行かない?」になっている。だから、断りにくい。

他にも、敢えて相手に断られるような頼みをすることで、「前の誘いを断ったし、今度のは断りづらいな」という気持ちにさせる方法もあります。もちろん、そういう負い目を感じてくれる人であればの話。

「このライブのチケットほしい?」「うん」「はい、あげる。その代わり、一緒に行ってね」と、後から要求を付け足して断りづらくする手もありますが、長い付き合いを望むのなら、控えた方がいい場合もあるでしょう。

好かれるための正攻法

【単純接触効果(ザイオンス効果)】
繰り返し接すると、好意度や印象が高まること。

【仮眠効果】
ある事象への懐疑的態度が、時間の経過とともに信頼的に変化していくこと。

【返報性の原理】
何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければと思うこと。

【黄昏時効果】
夕方の時間帯に判断力が低下すること。

なんだかんだ言っても、手近なところに落ち着くのは、よくある話。そこには繰り返し接したことで親しみが湧き、それが好意に繋がった事実があるかもしれません。だからといって、好きじゃない相手と繰り返し会ったところで、よく目につく嫌な奴からは脱却できません。印象が良い方に傾いていればこそです。

好かれようと思って接触回数を上げたら、引かれてしまったなんてこともあるでしょう。そんなときは、しばらく接触せずに時が経つのを待ちます。「あれ? 最近、見ないな」と思い、その人の評価を再検討。商品で言うなら、一度は購入をやめた物の評判を調べ、認識を深めていく過程になります。

使えて当たり前だと電気の有難みも薄れるというもの。たまに停電になると、無いと何もできないと痛感する。それと同じように、評価を再検討してもらう時間を相手に与えることで、関係性を発展させることが できるかもしれません。

その時間を与える前に、わかりやすく好意を示しておくのも大事。物を貰ったら、何か返さなきゃと思う。人には、好意には好意で応えたい気持ちがある。だから、「好きだ」と言ってくれる相手の方が好感を持ちやすい。ということで、相手に伝わる「好きです」アピールは大事。

そんなアピールをして拒絶されたらと悩む人に朗報です。夕方の時間帯は判断力が低下するそうですから、相手の頭が冴えていないときにアタックしましょう。相手はノーガードでアタックを受け、反撃を忘れて気持ちを受け止めるかも。そう考えると、放課後の校舎裏って、良い状況ですよね。授業が終わった解放感もあるし。

恋愛テクニック以前の問題

【公的自己意識】
他者から見られる自己を意識する傾向。

どんな手を打ったところで、どんなに相手の情報を知ったところで、自分を見誤っていては、効果なんて期待できないでしょう。自分が相手からどう見られているのか。それを客観的に把握してはじめて、数々のテクニックも実を結ぶというもの。

「敵を知り己を知れば、百戦して危うからず」です。敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、何度戦っても敗れることはない……という、孫子の言葉で締めさせていただきます。