恋をすると可愛くなる科学的な理由
「あの子、最近かわいくなったよね。恋でもしてるんじゃない?」というセリフはよく聞かれます。誰かと付き合い始めて、身なりを意識して変わることは珍しくありません。
しかし、それだけでなく「肌ツヤが良くなった」など、表面的な意識の変化だけではない部分も変わることがあります。当ページでは、こうした変化を科学的な視点で考察します。
恋愛による変化を科学する:ドーパミン作用説
興奮と快感を生むドーパミン
ドーパミンは中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリンやノルアドレナリンに変化します。やる気、記憶力、行動力、集中力などを高める脳内麻薬とも言われています。
ドーパミンは、自分が認められたとき、好奇心が満たされたとき、好きなことをしているとき、そして恋愛の初期段階において多く分泌されます。逆に、恋愛初期では安心に関わる物質であるセロトニンの分泌が抑えられ、不安が募る傾向にあります。
ドーパミンが放出されると、心拍数が上がり、血流が良くなって代謝が向上し、興奮で瞳孔が開くといった効果もあります。「誰かを好きになったらドキドキして不安」なのは、ドーパミンの増加とセロトニンの減少が原因でしょう。恋をして目が輝くのは、瞳孔が開いているからかもしれません。
脂肪燃焼と代謝アップ
ドーパミンはノルアドレナリンに変化しますが、ノルアドレナリンには満腹中枢を刺激し、脂肪分解や脂肪燃焼を促進する効果があるため、痩せることも考えられます。
これらの脳内物質の変化が、見た目ではない部分の変化として現れると言えるでしょう。
ただし、セロトニンの生成量は男女で差があり、女性は男性よりもセロトニン量が少なく、不安を感じやすい傾向があるため、うつ病の発症率は女性の方が高いという指摘もあります。
恋愛の「賞味期限」を科学する
恋愛の賞味期限は3年説
「恋は3年で終わる」という説の根拠は、恋愛初期で分泌量が増えるドーパミンが、3~4年で出なくなるという点にあります。ドーパミンをずっと出し続けると脳が疲弊するため、分泌量が減少するようです。
ドーパミンが多く出ている間は脳が限定的なマヒ状態にあり、相手を冷静に見ることが難しくなります。これは子孫繁栄のため、子作りという負担を伴う行為に及んでもらうために、思考をマヒさせる仕組みだという主張もあります。
このマヒ状態はアルコールの摂取でも引き起こされ、飲酒によって脳のブレーキが外れると、性衝動に影響する男性ホルモンであるテストステロンが女性の体内でも生成されやすくなり、本能的な行動に繋がりやすくなります。
恋をしても綺麗にならない人の特徴:ストレスホルモン説
コルチゾールによる老化の加速
コルチゾールはストレスを受けた際に多量に分泌されるホルモンです。これは血糖値を上げて体を守ろうとしますが、同時に不安定な電子を持つ活性酸素も発生させます。活性酸素は細胞から電子を奪ってDNAを傷つけ、これが老化(体が錆びる)に繋がります。
先に述べたように、恋愛初期でセロトニンが減り、不安が増すことで多大なストレスになってしまうと、コルチゾールが過剰に分泌され、綺麗になるどころではない状態になってしまいます。
セロトニンとオキシトシンでストレスに対抗する
セロトニンは不規則な生活だと出にくくなりますが、規則的な生活で睡眠時に分泌されるメラトニンが体のリズムを調整し、睡眠を安定させます。
セロニン生成には、食事から摂取が必要な必須アミノ酸トリプトファンとビタミンB6が必要です。また、運動や入浴によるリラックス、そして好きな人との触れ合いによっても促されます。
好きな人との接触時には、セロトニンと一緒にオキシトシンも分泌されます。オキシトシンは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれ、脳の疲れを癒し、気分を安定させる効果があります。ペットや気の合う仲間と親密な距離で話すことでも分泌されます。
負の感情が人を醜くする科学的根拠
脳は現実と想像の区別がつかない
イメージトレーニングが効果的である理由の一つに、脳は現実と想像の区別がつかないという特徴が挙げられます。酸っぱいものを想像するだけでよだれが出るように、脳内イメージは体の機能に働きかけます。
このため、よくないイメージ(不快なこと)で脳内を埋め尽くすのは避けるべきです。ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を促し、老化を加速させてしまうからです。
悪口が自分に跳ね返るメカニズム
人の悪口を言うのは倫理的だけでなく、科学的にもお勧めできません。脳は誰に対する悪口か認識できない場合があり、主語が不明な場合は自分に対する言葉として受け止めてしまうからです。結果、自分が攻撃されていると感じ、ストレスを受けコルチゾールが分泌され、老化が加速します。
悪口を言っている最中に快感(ドーパミン)を感じることもありますが、同時にストレスも受けているため、ドーパミンよりコルチゾールが優位になると、言うほどに不機嫌になっていくでしょう。
愚痴を言う際は、話す相手に許可を取り、話し終えたら感謝を伝えることで、オキシトシンを出す「気の合う仲間と喋る」行為に近づけることができます。
ちなみに、自慢話や説教をする際にもドーパミンが分泌され快楽を感じています。過剰なドーパミンは中毒性があり、受容体を鈍くし、より強い刺激を求める傾向に繋がるため、買い物依存症などにも注意が必要です。
【参考文献】脳はなんで気持ちいいことをやめられないの? コミックエッセイ [ 中野信子 ]
↑ リンクを貼られたので、お返しに貼ってみた。