ホームページの変遷について:1990年代後半からの歴史
本来、ホームページとはブラウザを起動した際に表示されるサイトのページを指しますが、いつの間にかウェブサイト全体を表す言葉として使われるようになったため、このページでもウェブサイトの変遷を「ホームページの変遷」として扱います。
1990年代後半のホームページ
Windows98の登場とともにインターネット回線(電話回線、ISDN)を引く人が増えましたが、当時の通信速度は56Kbps程度と非常に遅く、動画や重い画像は事実上見られない環境でした。
この時代の個人ホームページは、プロバイダの無料サービスを利用したものが主流で、通信環境に合わせてシンプルな設計が求められました。
当時の特徴的な文化と技術
- テーブルレイアウトとスペーサー
- デザインの主流は、表を作るための`table`タグを利用したテーブルレイアウトでした。余白の調整には、幅と高さを指定した透明なGIF画像(`spacer.gif`)が多用されていました。
- アクセスカウンターとキリ番あいさつ
- ページが読み込まれた回数をカウントするアクセスカウンターが設置され、キリの良い数字(キリ番)を踏んだ訪問者が掲示板(BBS)に挨拶を書き込む「キリ番あいさつ」が一種の礼儀とされていました。
- スタイル指定
- CSSが普及する前だったため、HTMLのソース内(`font`タグなど)で文字サイズや色指定を直接行う形式が一般的でした。
Googleの登場とフレーム分けの終焉
ネットの普及に伴い、検索需要が高まると、ディレクトリ型(登録型)検索サイトの限界が見え始めます。そこに登場したのが、ロボット型検索エンジンであるGoogleです。
当時のデザイン流行の一つに、画面を複数領域に分割する「フレーム分け」がありました。しかし、Googleはページ単位で情報収集するため、検索結果からメイン領域のHTMLだけが読み込まれてしまうと、メニューが表示されずサイト内を移動できないという問題が発生。このアクセスの問題により、`frame`タグを使ったデザインは廃れていきました。
2000年代のホームページ:回線高速化とSNSの台頭
回線スピードが増すと、Flashを使った凝った演出や、JavaScriptでの装飾を多用した「技術見本市」のようなサイトが増加しました。しかし、ユーザーが求めていたのは、そうしたスキル自慢ではなく、知りたい情報や共有の場でした。
この頃から「2ちゃんねる」のような広範囲で情報や面白さを共有する場が求められるようになります。そして、「mixi」や「ブログ」の登場により、個人のホームページ(「XXXの部屋」)は激減します。
HTMLを駆使しなくても日記を公開できる、知り合いと簡単に繋がれる、掲示板も不要。
このSNSやブログの機能の原点は、すべてネット上に作られた「個人の部屋」の機能拡張に過ぎないのではないでしょうか。
それからのホームページ:情報と収益
「XXXの部屋」が駆逐された後、アフィリエイト広告の広まりと共に、情報で収益を上げる「ビジネス部屋」が増加しました。しかし、元々個人的な交流や趣味のための「部屋」では、ターゲット層が狭いため、ビジネスへの転用は容易ではありません。
スマホの普及、レスポンシブデザイン、動画サイトとの連携など、技術的な移り変わりは多々ありますが、結局のところ、ホームページの主役は派手なデザインや制作者のスキルではなく、提供される情報そのものにあるという結論に至ります。
新世紀のネット部屋:未来のコミュニティの考察
ネット上の個人スペースを「部屋」と表現する文化が興味深い現象です。部屋には自由がありますが、意図しない訪問者による荒らしや炎上(火事)のリスクも伴います。
属性で区切られた「部屋」の可能性
現実の部屋に高級なものや狭い四畳半があるように、ネット上の部屋もユーザーの属性によって区切られることで、より居心地の良い環境が求められるかもしれません。
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セレブ専用の会員サイト
高級感、自尊心をくすぐる閉鎖性。ただし、そこで「何を語り合うか」が重要になります。
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精神年齢や知能指数による交流サイト
自分と同レベルの人が集まる場所は居心地が良いもの。例えば、「たとえ話が通じる人」「たとえ話が通じない人」で区分けするだけでも、コミュニケーションの質が向上するかもしれません。
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生活支援情報サイト(非推奨の可能性も)
低所得者向けに支援情報を共有する場。ただし、貧困ビジネスを狙う者から情報を守る仕組みが必須となります。
このように属性を隠しつつ選別テストを行い、自分に合ったコミュニティを構築するニーズは今後も高まるでしょう。問題は、そのサイトのメリットをどうアピールするかです。