ホームページの変遷について

ホームページの移り変わりに関することを書いているページです。本来、ホームページはブラウザを起動した際に表示されるサイトのページを指すのですが、いつの間にかウェブサイト自体を表す言葉として使われるようになったので、このページでもウェブサイトの変遷ではなく、ホームページの変遷としています。

1990年代後半のホームページ

Windows95というOSが出た辺りから、パソコンの画面というものがカラフルになったような記憶があります。それ以前は、黒い画面でコマンド入力をして、使いたいソフトを立ち上げる。そんな感じだったように思うのですが、どうにも思い出せません。あまり触っていなかったので……。

Windows98が出る頃になると、インターネット回線を引いてる人も珍しくなくなってきたように思います。当時のネット回線は電話回線を使用したもので、ネットを使っている間は電話が使えませんでした。なので、2回線を同時に使えるISDNなるものが登場したわけです。

この時代のホームページは、プロバイダ契約時にオマケでついてくる無料ホームページサービスを利用したものが多かったです。個人の利用者にとっては、無料で使える容量だけで充分でした。容量が大きな画像なんか必要なかったのです、回線が遅すぎて……。

「ピーヒョロロー」みたいな音がするダイアルアップ接続では、56Kbps程度の通信速度でした。今はMbpsやGbpsという単位なので、桁が違うのが一目瞭然。動画なんて、まず見られない環境でした。使える画像形式もjpgとgifくらいでしたが、それでも上から順に表示されていくような状態。pngはブラウザが対応していなかったはず。

そんな通信状況だったこともあり、重い画像を載せているサイトは嫌がられました。自作の音楽をMIDIにして、サイトで鳴らす人も痛い感じでしたが……。当時の個人ホームページのメニューは、プロフィール、掲示板(BBS)、リンク、チャット、日記、イラスト&写真といったものがスタンダード。

そこにアクセスカウンターというページが読み込まれた回数をカウントするものを設置し、そのカウンターでキリのいい数字だった人が「キリ番あいさつ」をするというのが礼儀でした。「キリ番あいさつ」は、「1000番目の訪問者になりましたXXです」みたいな書き込みを掲示板にすること。この強制イベント、迷惑ですよね……。

デザインとしては、表を作るために用意されたtableタグを使ったテーブルレイアウトが主流で、余白はスペーサーと呼ばれる透明なgifの幅と高さを指定することで調整していました。そのスペーサーのファイル名は「spacer.gif」とする人が多かったので、検索すれば見つけられることでしょう。

今は別ファイルとしてCSSを用意するのが当たり前になっていますが、当時はHTMLの中で文字サイズや色指定をする仕様でした。なので、HTMLのソースを見ると、fontタグの指定だらけということも……。

Googleの登場と消え去るフレーム

ネットが普及すると検索の需要が高まり、Yahoo!の株価がえらいことになってニュースになりました。「日本で史上初の株価1億円を突破」というヤツですね。こうなると、自分のサイトを検索結果で表示させたい人が増えるわけですが、ディレクトリ型(登録型)の検索サイトには限外があるわけです。

そこに颯爽と登場したのがGoogle。パソコン初心者には少し縁遠い存在でしたが、よくネットを利用する人は飛びついたのではないでしょうか。とにかく、いろんなページが引っかかる。ヤバいページを発掘できる。画期的でした。

ロボット型検索エンジンなので、自動的にサイト情報を収集して分類できる分、インデックス化したページの量が半端ない。ただし、情報収集はページ単位で行われるので、検索結果に表示されるのは「そのページだけ」になります。

これの何が問題だったのかというと、当時のデザイン流行のひとつと言えるフレーム分けが意味をなさないこと。フレーム分けとは、フレーム用のHTMLを用意し、そこに左側は「abc.html」を読み込み、右側は「def.html」を読み込むといったもの。よくある例を挙げれば、左側をメニュー領域とし、右側をメイン表示領域とするといった具合。メニューにあるリンクを押すと、メイン領域が指定されたHTMLに切り替わります。

このフレーム分けは、フレーム用のHTMLを最初に読み込むことが前提で作られています。つまり、右側のメイン領域用のHTMLだけ読み込まれると、メニューが表示されないので、サイト内を移動できなくなります。せっかく、自分のサイトに来てくれても、そのページしか見てもらえない。しかも、意図しないデザインのまま。そういうこともあり、frameタグは廃れていきました。

2000年代のホームページ

回線スピードが増すと、技術見本市みたいなホームページが増えていきます。Flashを使って、いかに凄いかをアピールするだけの企業サイト。JavaScriptでの演出を自慢したいだけの個人サイト。回線が遅い人にとっては、「重いから、すぐ閉じる」だけのサイトが増えました。

人は知りたい情報を求め、ネットの海を検索して進むわけです。なのに、「俺様のスキルを見な」みたいな自慢しかないオナニーサイトが増えたのは悲しいことでした。ホームページ制作を請け負う側も、企業サイトはブランドイメージのアピール場所みたいに思っていたのか、素人には作れないオシャレサイトを目指していたように感じます。

一方で、「ご近所さんを探せ!」というエリアコミュニティが一部で広まったり、侍魂というテキストサイトが人気を博したりします。ネットを通して、面識のない人と面白いものを共有する、もしくは物理的な距離が離れてしまった人と交流する場としてのサイトが求められるようになったのでしょう。

誰かと何かを共有する、それも広範囲でとなると、当時は「2ちゃんねる」に書き込むのが手っ取り早かった気がします。今ならTwitterで「このサイト、面白いよ」とツイートするところですが、以前は今ほど拡散に向いたツールがありませんでした。

このあと、「mixi」や「ブログ」が登場することで、個人のホームページは減っていきます。HTMLを駆使しなくても日記を書いて公開できるし、知り合いともリンクで繋がれるし、掲示板を設置しなくても書き込めるから、もう「XXXの部屋」みたいなホームページは要らなくなったのです。たぶん。

流行り廃りの激しいSNSも、元をたどれば「あのダサいXXXの部屋」だったのではないか、機能の原点はネット上に作られた個人部屋に過ぎないのではないか。そんな風に思えるところがあります。

それからのホームページ

「XXXの部屋」が駆逐されて日が経ち、情報で収益を上げる「ビジネス部屋」が増えました。アフィリエイト広告の広まりと共に、自室をビジネス用に改築した人も多いでしょうが、住居用から事業用への転用は容易ではありません。

「XXXの部屋」なんてのは、サイト管理者に興味がない人には、まったくもって用がないサイトですから、そんなところにアフィリエイト広告を出しても厳しいのは想像に難くありません。だって、ほぼほぼ知り合いしか見に来ないんですよ。英会話に関係のないサイトなのに、英会話教材の広告を出したところで、「それを欲しい」と思う人が何人いるというのか、みたいな話。

事業用に改築して英会話教材を売りたいのなら、少なくとも英会話に関連するサイトにするか、親和性の高い話題を扱うべきでしょう。その点で言えば、「XXXの部屋」が流行ってた時代から、特定の何かを知るのに役立つサイトを作っていた人は、先見の明があると思います。

スマホの普及に伴って、デバイスごとの画面サイズの最適化。動画サイトの人気に伴う動画説明やサイトへの誘導。HTMLやCSSの変化。いろんな移り変わりはありますが、ホームページの主役はデザインやスキルではなく、情報にあるのだと私は考えます。

新世紀のネット部屋

ホームページの移り変わりを振り返ってみて、「XXXの部屋」と名付ける人が多かったことが、非常に興味深い事象に思えてきました。ネット上の個人スペースを「部屋」と表現している。言いえて妙だな、そう感心します。

好きなように物を配置でき、好きな音楽を鳴らし、思っていることを口走り、友達を呼んで語り合う。なるほど、これは部屋だなと。ただ、公開している部屋なので、意図しない人が入ってきて、土足で荒らしまわることもあります。発言に問題があれば、誰かに火をつけられて炎上することも……。火の不始末で火事になる、やはり部屋ですね。

「ここはグリーンウッド」という漫画で、部屋をゲームセンターにして収益を上げているキャラがいましたが、アフィリエイト・サイトも似たようなもの。そう考えると、ますますサイトが部屋に思えてきます。

では、この後に登場する部屋には、どんなものがあるのか。それを現実にある部屋から考えみます。まず、部屋と一口に言っても、高級感が漂う部屋もあれば、狭い四畳半の畳部屋もあります。前者を好む人は、貧乏くさい人には来てほしくないと思うかもしれない。「私のようなセレブだけが入れる部屋があるべき」みたいに考えているとしたら、セレブしか入れない会員サイトの需要があるかもしれない。

実際、ブランド腕時計のメーカーサイトの中には、メンバーズサロンがあり、メンバーズサイトへログインしないと入れなかったりします。これは「お高い時計を買える私はセレブ」みたいな自尊心をくすぐる手として有効そうですね。問題は、自称セレブが集まって、何を語り合うのか……。

「私、200万円の時計を買いましたの」「へぇ~、安いのつけてるね。俺のなんか、1,000万円はするぜ」みたいな世界だったらゲンナリです。せめて、「一流ブランドの時計をつけてる私たちはセレブ♪ みんな仲間」みたいな空気だと救いがあるのですが。

逆に狭い四畳半しか選べない人にとっては、セレブ系の人は見ているだけで劣等感を刺激され、精神衛生上よくない存在かもしれません。そんな人には、低所得者向けに発行されるIDとパスワードで入れる「生活支援情報サイト」なんかどうでしょう。みんなで苦しみを分かち合えるかも。それに、貧困ビジネスをしようとしている輩に、飯のタネになりそうな支援情報を与えられずに済むかもしれない。いや、ないか。

あとは精神年齢と知能指数で所属が割り振られる交流サイトとか。人間、自分と同レベルの人が集まっている場所の方が落ち着くというもの。理解力のない人に一から説明するのは面倒だし、天才と話しても意味不明なので、自分に合った知り合いの輪を作りたい。

個人的には、「たとえ話が通じる人」「たとえ話が通じない人」という区分けだけでも、だいぶ接しやすい環境になると思います。何かの「たとえ話」を用いて、理解しているかテストさせるだけで、選別は可能ですし。もちろん、「アホの部屋」「賢者の部屋」みたいなネーミングではなく、「もも組」「さくら組」みたいな所属する人が分からない名称を使い、選別テストも本性を隠した状態で行います。問題は、このサイトのメリットをどう説明するかですね。いろいろ隠しては、アピールの仕様がないので。